いまを読み解く Column

購買行動の多様化へ柔軟に対応できる「ユニファイドコマース」実現に向けて

2022年7月6日に開催したオンラインセミナー「多様化する消費者購買行動への柔軟な対応の実現について」の内容を再編集したものです。

吉井 進一(よしい しんいち)
クオリカ株式会社
サービスクリエーション事業部
流通営業部 主査

オリンパス在籍中にファッション・アパレル業界向けのユーバス事業の立ち上げに従事。1990年代からアパレル企業のSPA業態転換の支援に着手し、以来約30年にわたりアパレル業界の課題解決に取り組む。2017年よりクオリカ株式会社サービスクリエーション事業部に在籍。

2000年代になってECサイトの普及、スマートフォンの登場、さらにこの数年のコロナ禍の影響で、消費者の購買行動スタイルは大きく変革しました。消費者のカスタマージャーニーが大きく変化する中、企業にとって「消費者起点で物品販売のビジネスを考える」ことが重要度を増しています。

ここでは、消費者がモノの購入時に抱きがちな不満の整理と、その解決に役立つマーケティング手法「ユニファイドコマース」をご紹介します。そして、ユニファイドコマースの仕組みを早期構築するための進め方について解説します。

1.消費者がモノの購入で抱きがちな5つの不満


消費者の購買行動スタイルが大きく変化する中、従来型のマーケティング手法では、消費者ニーズを満たせないケースが少なくありません。消費者が、アパレルの新作ファッションを購入する場合を例に、よくある不満を5つのテーマで整理してみます。

①「私のことを分かってくれていない!」という接客の不満

もう何年も買い続けているブランドなのに、いつもと違うお店に入ったら「初めてのご利用ですか?」と一見さん扱いされてしまった。このような接客時に受ける不快感が積み重なると、ブランドに対する信頼感を損ないかねません。

②「どのお店なら在庫があるの?」という欠品の不満

ECでほしい洋服を見つけたものの、既に売り切れ。いつも行っているお店に電話しても在庫なしと分かりました。電話に出た店員からは「他のお店には在庫があるかも知れません」とあいまいな説明があり、ほしい時にすぐ買えないイライラは募るばかりです。

③ すぐ試着したいのに、数日後の来店予約しかとれなかった

ECで見た洋服を会社帰りに試着してみたい、といった時。帰宅途中にある店舗に電話してみたものの、「すぐ試着できる品物がない」「いつもの担当者が不在」などの理由で、数日後の来店予約しかできなかったケース。何日も空くと、購買意欲も冷めてしまいます。

④ 実店舗でためたポイントが、ECで使えない!

実店舗でポイントカードを提示して貯めたポイントが、ECサイトでは使えないというケースは、まだまだ多いようです。もはや消費者にとって、リアル店舗とECをシームレスに行き来しながら買い物をすることが当たり前になっており、このような“ポイントの分断”は致命的になりかねません。

⑤ 購入済み商品のレコメンドが送られてきて迷惑

ECで商品をチェックし、新作ファッションを「お気に入り」に登録。その後、店舗に出かけて実際に購入したのに、ECからはその後繰り返し、この商品のレコメンドが通知される。不要な情報の通知が多いと、消費者は不快な気持ちになってしまいます。

これらの不満はいずれも、在庫情報や顧客情報に代表される、「情報が共有できていない」ことに原因があります。個別に見ていくと、このように整理ができます。

不満 整理
①「私のことを分かってくれていない!」という接客の不満 顧客情報を
共有できていない
②「どのお店なら在庫があるんだろう?」という欠品の不満 在庫情報を
共有できていない
③ すぐ試着したいのに、数日後の来店予約しかとれなかった ECから店舗誘導する、
試着導線がない
④ 実店舗でためたポイントが、ECで使えない! ポイント情報を
共有できていない
⑤ 購入済み商品のレコメンドが送られてきて迷惑 購買履歴を
共有できていない

問題を抱えた現状を簡潔に図式化すると、次のようになります。各店舗やEC、それぞれの顧客接点が、別個に「在庫情報」「会員情報」「購買行動履歴」等を管理しており、それが共有できていない状況であることが分かります。

購買行動の多様化が進む中、事業者側は、さまざまな顧客接点から取得した情報をいかに共有し、データを活用していくかが求められています。

ユニファイドコマースで目指す快適な購買体験


今回ご紹介するマーケティング手法「ユニファイドコマース」は、直訳すると「統合された商取引」という意味になります。大きく分類すると、店舗・ECなど複数の顧客接点を軸とするマーケティング手法の一つですが、これまでのオムニチャネル、OMO、O2Oといった考え方とは大きく異なっています。

従来のマーケティング手法は、どちらかと言うと増え続ける販売チャネルをどう連携させるかという、事業者側のビジネス戦略重視の考え方でした。一方、ユニファイドコマースは、あくまで“お客様に快適な購買体験をしてもらい、満足度を高めていく”ことに主眼が置かれています。

ユニファイドコマースを分かりやすい言葉で定義すると、次のようになります。

ユニファイドコマースとは・・・

オンライン・オフラインに関わらず、いつでもどこでも買い物ができ、お客様一人ひとりの心をつかむ接客や商品によって、心地よいお買い物体験を提供すること

この状態を実現するには、顧客接点ごとに分断されている情報を一元管理する仕組みづくりが、最初の目標になります。その上で、取得したデータを利活用することで、顧客ごとの属性の把握、在庫のリアルタイム一元管理、一人ひとりに嗜好に基づくレコメンドの提供等が可能になります。

3.システム間の「個別連携」は
仕組みの複雑化・硬直化につながりやすい


ここからは、ユニファイドコマースの仕組みを構築するために、どこから着手すればよいかを考えてみます。

近年、多くの小売事業者は、以前からあった売上管理・在庫管理等の基幹システムに、さまざまな販売管理ツール、データ分析・マーケティングツール等を組み合わせて採用しています。たとえば、店舗にはPOSレジや店舗運営管理システムを導入、ECサイトは定評あるパッケージを導入、スマホからのECを担う自社アプリの開発、マーケティングオートメーション(MA)を利用したメルマガ配信など。そのため、多くのシステムやサービスが複雑に絡み合ったかたちとなりがちです(図参照)。

このように、各システム間を個別に連携させるシステムインテグレーションでは、多様化するお客様の消費行動に対応するために迅速なシステム基盤を更新することが困難です。新たなDXの取組みを実施するたびに、多額のコストがかかってしまいます。

4.コマースを支えるシステム群を
「統一化/構造化」することが重要


消費者の購買行動は、今後も変化していくことが予想され、ユニファイドコマースを支えるシステム基盤には、柔軟性・拡張性が求められます。「変化に強い」基盤とするには、個別にシステム間の連携を図るのではなく、統一化/構造化によって基盤の柔軟性を高めることが、顧客への価値提供につながると我々は考えます。

TISインテックグループでは、ユニファイドコマースに適したシステム基盤を、次のように3つのレイヤー(サービスレイヤー/プラットフォームレイヤー/基幹システムレイヤー)から構成することを推奨しています(図参照)。

最下部「基幹システムレイヤー」は、企業内に存在する在庫管理システムや販売管理システム等の基幹システムのことで、上位レイヤーから切り離しておくことで、変化の影響を受けずに済みます。

最上部にある「サービスレイヤー」とは、たとえばスマホにインストールするECアプリや、ECのWebページなど、顧客接点になる部分です。今後、VRをインタフェースとしてグッズを購入したり、自宅の冷蔵庫が自動で購買を行なうといった、新しいテクノロジーをいち早く採用し、頻繁にアップデートが図られる領域となります。

そして、中間にある「プラットホームレイヤー」は、ユニファイドコマースを支えるいちばん重要度の高い部分と言えます。主な役割は、複数の販売チャネルのバックエンド(「受注」「在庫確認」「出荷」など)を担う機能を共通化することです。こうした機能は一般的に「OMS」(オーダーマネージメントシステム)と総称されます。

これまで、企業が広く採用してきた定番のECパッケージでは、OMSを含むすべての機能をオールインワンで提供していました。ユニファイドコマースの実現に向けては、こうしたワンストップ型の仕組みから、消費者との接点になるサービスレイヤーは「SaaS型のECシステム」、受注や在庫確認等の機能は同じく「SaaS型のOMS」を組み合わせるモジュール構造に変革することを推奨します。

これにより顧客接点が変化しても、他のレイヤーに大きく手を入れる必要がなく、コマースのバックエンド機能を安定的に運用できるメリットが生まれます。このように、ECサイトを含むコマースを複数モジュールで構成するかたちは、「ヘッドレスコマース」とも呼ばれ、最近のECシステムのトレンドになっています。

このような考え方に基づき、システム基盤の再構築を進めていくことが、ユニファイドコマースを早期に実現するための第一歩になります。


私が所属するクオリカ株式会社は、TISインテックグループの中核会社の一つであり、小売業界向けに35年の実績を持つソリューションベンダーです。小売業界向けトータルソリューションとして、POS・販売・商品・顧客管理(CRM)といった機能を網羅した「Specialty Qube Growth」を提供しています。これまで、アパレル、服飾雑貨、宝飾、靴、時計、メガネといった小売業専門店チェーンで、延べ100社・10,000店舗以上の採用実績があります。

この「Specialty Qube Growth」をご利用になれば、システムの機能拡張により、顧客に対しパーソナライズした情報・購買体験を提供するユニファイドコマースを容易に実現することができます。小売ビジネスのさまざまな課題を一つのシステムで解決したいとお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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