#2.オンプレミスのOracle Databaseをクラウド化するための、ベストなクラウド選択とは
クラウドの利用は今や当たり前ですが、企業においては実際にクラウド活用にどのように取り組んでいるのでしょうか。特にデータベースのクラウド化はそれほど進んでいないとの話も耳にします。このコラムでは、普段エンタープライズIT領域でベンダー動向やさまざまなユーザー事例を取材するフリーランスジャーナリストの立場で得られる情報と、日常的に顧客企業と接しているTIS担当者へのインタビューから、クラウド化に取り組む企業のリアルな状況を紐解いていきます。コラム1では、オンプレミスのデータベースシステムをクラウドに移行すべきかどうかについて考えました。今回はより具体的に、オンプレミスで利用しているOracle Databaseをクラウド化する場合に、ベストなクラウドとはどのようなものになるかを考えていきます。
<目次>
オンプレミスとクラウドにおける運用管理とRAC(Oracle Real Application Clusters)の高可用性の課題
現状、パブリッククラウドではAWSが大きなシェアを獲得しており、Microsoft Azureが追随、Google Cloudも国内ビジネスの拡大に力を入れOracle Cloudも攻勢を強めています。単純なサーバー用途でIaaSを利用したいだけなら、コストパフォーマンスなどを比較し選択しても大きな問題はないでしょう。そもそもIaaS部分だけなら、クラウドサービス間で大きな差は見出せないかもしれません。
出展:Canalys-Global cloud infrastructure market Q4 2020
https://www.canalys.com/newsroom/global-cloud-market-q4-2020
一方データベースのシステムとなると、どういった基準でどのクラウドサービスを選ぶべきかに頭を悩ませるIT部門担当者も多い事でしょう。既にAmazon EC2を利用しアプリケーションを動かしているのであれば、データベースにAmazon RDSを利用することも多いでしょう。クラウド上で新たに構築するアプリケーションで利用するなら、利用するクラウドサービスが用意するマネージド型データベースサービスを選ぶのは得策です。
一方で既存のデータベースの移行先となると、多様な選択肢があります。まずは、IaaS上にオンプレミスと同じデータベースをインストールし利用する方法が考えられます。既存環境をそのまま「リフト」することになるので、移行後のアプリケーションのテストなどはネットワーク接続設定の確認など最小限に抑えられるでしょう。
この方法で問題となるのは、データベースはそのまま移行できても、オンプレミスとクラウドでは運用管理方法が変わってしまう事です。バックアップや運用監視の仕組みまで、そのままクラウドに持って行けなければクラウド特有の運用管理環境を自分たちで構築し、それに合わせた管理体制も整備する必要があります。
さらにOracle DatabaseでOracle Real Application Clusters(以下RAC)の高可用性構成などを利用していた場合は、同じ構成をクラウド環境に構築できないという課題もあります。RAC環境をパブリッククラウド上で実現できるのは、現状ではOracle Cloud Infrastructure(以下OCI)のデータベースサービスだけです。他のクラウド環境では、RACとは別の方法で可用性を担保する必要があり、当然構成も変わり、それに応じたテストの手間が発生します。
Oracle Databaseのライセンスコストとオンプレミスのクラウド移行の行く末
もう1つOracle DatabaseをOCI以外のクラウドサービスに載せようとすると、ライセンスコストが上がる問題もあります。TISでデータベース(DB)エンジニアリング/コンサルタントの立場としてクラウド化の診断や実際の移行や運用を15年以上に渡って手掛けてきたこの道のスペシャリストである貴志氏は「Oracle Databaseをオンプレミスと同じCPUスペックのままAWSなどのIaaSに移行しようとすると、ライセンス費用が倍になってしまいます。そのためOracle Database Enterprise Editionを利用している場合は、Standard Edition 2にダウンエディションでコストを抑えAWSにリフトするケースもあります」と指摘しています。
RAC構成が必要なく、ライセンス費用にもあまり影響が出ないStandard Editionなどのデータベースシステムでは、AWSなどのPaaSやIaaSへの移行も起きていますが、RACを使う高可用性構成のEnterprise Editionのデータベースでは、一部を除けば移行する例はあまり多くありません。
結果的にEnterprise Editionベースのシステムは、オンプレミスに残りがちで、AWSのクラウド上のシステムなどと疎結合で連携するハイブリッドクラウド構成となる場合もあります。現状ではまだ全てのシステムがオンプレミス上からなくなるとは考えにくく、結果として何らかのオンプレミス環境が手元に残ることになります。そうであるならばEnterprise Editionのシステムはオンプレミスに残したままにしようとの判断にもなるのです。
先述の貴志氏は「結果的にオンプレミスのOracle Databaseをなるべく手間なくクラウド化するには、OCIを選ぶのが最良な選択でしょう」と言っています。OCIであればRACを含みデータベースサービスに既存のオンプレミス環境をそのままリフトすることも容易です。
さらに、運用管理負荷がなくチューニングも必要ないOracle Autonomous Databaseという選択肢もあります。またオンプレミスではなかなか手を出せなかったOracle Exadataも、Oracle Exadata Cloud Serviceなら大きな初期投資無しに利用可能となり、Oracle Exadata Cloud Serviceを選べば、高速な検索処理性能などが容易に手に入ります。ちなみにOracle Autonomous DatabaseのサービスもExadata上で動いており、Oracle Exadata Cloud Serviceと使い分けるポイントは、全ての運用管理任せるOracle Autonomous Databaseに対し、OSレベルである程度コントロールしたいニーズがある際にOracle Exadata Cloud Serviceを選ぶことです。
エンタープライズに最適なOCI(Oracle Cloud Infrastructure)のセキュリティとRAC活用メリット
「クラウドでOracle Databaseを動かすならば、ライセンスや機能面でOCIに圧倒的な優位性があります。OCIならRACが使え、もともとエンタープライズ用途に向いている高度なセキュリティも担保されています。政府情報システムのためのセキュリティ評価制度ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program)にも対応し、ミッションクリティカルなシステムも安心してOCIに移行できるようになりました」と貴志氏もOracle DatabaseをOCIに載せるメリットを説明しています。大手企業を中心にOCIの認知は徐々に高まっており、顧客が選択肢としてOCIを挙げるシーンも増えています。
また「Oracle Autonomous Databaseの市場認知も上がり、引き合いが増えています。ガートナーなどからも他のPaaSデータベースを抑え高い評価を受けており、Oracle自身も力を入れているので今後エンタープライズ領域での利用が大企業を中心に大きく拡大すると考えています」とも貴志氏はコメントしていました。
TISが提供する「Oracle Autonomous Databaseマイグレーションサービス」概要
TISでデータベース周りの営業リーダーを務める伊藤氏も「TISでは、既存のOracle Databaseをどのようなインフラに移行すべきかを判断し、移行をサポートする『Oracle DBマイグレーションサービス』を提供しています。その中でも『Oracle Autonomous Database/ Oracle Exadata Cloud Service導入・移行サービス』などOCIに特化してクラウドの移行をトータルにサポートする『OCIトータル支援サービス』など魅力的なサービスを提供しています」とTISの取り組みをアピールしていました。
▼TISのDBマイグレーションサービス
https://www.tis.jp/service_solution/db_cloud_migration/
Oracle DBマイグレーション構成図
既存のOracle Databaseを、AWSやAzureなどの別のデータベースに移行するとの判断もあるでしょう。とはいえ「そもそも既存のデータベースでOracleを採用しEnterprise Editionを選んでいるなら、そこには理由があったはずです。その理由を改めて考えてみてください。RACで極めて高い可用性を確保し止まらないシステムを作りたい、データベース管理者もデータを見られないようにし不正アクセスから完璧にデータを守りたいなどを実現したかったのではないしょうか。オンプレミスのOracle Databaseで実現していたそれら要件を、OCIであれば容易に実現できるはずです」と伊藤氏は加えてコメントしていました。
▼TISのOCIトータル支援サービス
https://www.tis.jp/service_solution/DBTech/OCI_service/service-list/
TISが提供する「OCIトータル支援サービス」
今回は、オンプレミスのOracle Databaseをクラウド化する際にはどのようなポイントで選択するべきかを考えてきました。適切なクラウドを選ぶためには、ライセンスコスト、運用管理の負荷、高可用性の確保、そしてクラウドサービスの特性を理解することが重要です。OCIはOracle Databaseに特化した利点が多く、特にRAC構成が必要な場合や高度なセキュリティも担保されおり、ライセンスコストを抑えたい場合には有力な選択肢となります。クラウド化の進行に伴い、企業はこれらのポイントを総合的に検討し、自社のニーズに合ったクラウド選定が必要になります。
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