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#5.ERPパッケージアプリケーションをクラウド化するための事前検討ポイントとは

クラウドの利用は今や当たり前ですが、企業においては実際にクラウド活用にどのように取り組んでいるのでしょうか。このコラムでは、普段エンタープライズIT領域でベンダー動向やさまざまなユーザー事例を取材するフリーランスジャーナリストの立場で得られる情報と、日常的に顧客企業と接しているTIS担当者へのインタビューから、クラウド化に取り組む企業のリアルな状況を紐解いていきます。コラム4では、Oracle Database Enterprise Editionを利用しているミッションクリティカルなシステムでのクラウド化を考えた際には、性能や可用性、バックアップなど機能以外の要件もオンプレミスと同じ状態に移行しやすいOracle Cloud Infrastructure(以降OCI)が有効な選択肢だとの話をしてきました。もちろん、OCIが唯一の選択肢と言っているわけではなく、それぞれのシステム状況に応じ適切なクラウドサービスを選ぶ必要があります。さらに移行時の手間や移行コストだけで判断するのではなく、周辺システムとの関係性や中長期的な運用に至るまでを視野に入れたトータルコストで選択をしないと、思わぬ苦労をすることにもなりかねないと指摘してきました。
さて今回は少し視点を変え、オンプレミスで運用しているERPなどのパッケージアプリケーションをクラウド化するためには、いったいどのような点を考慮し、事前に検討しておくべきポイントは何かを考えていきます。

ERPクラウド化の背景とメリット

従来、ERPアプリケーションのクラウド化は、システムインフラを所有しない事で資産からも管理からも解放され、運用コストの削減につなげる事を主な目的としていました。しかし昨今では、「より前向きな理由でクラウド化に望むケースが増えています」と、TISでデータベース(DB)エンジニアリング/コンサルタントの立場としてクラウド化の診断や実際の移行や運用を15年以上に亘って手掛けてきたこの道のスペシャリストである貴志氏はコメントします。コスト削減はもちろん、システムをクラウド化する事により俊敏性や柔軟性をより多く獲得し、インフラ管理から解放されることで生まれる余裕を、データ活用などの本来のビジネス投資に活用したい。そう考えるIT部門の担当者も増えているのです。

2025年の崖

クラウドに移行するための要件が軽いERPの周辺アプリケーション等は先行してクラウド化されている場合が多く、最後に残ったERPのクラウド化に本格的に取り組まなければならないケースが増えています。俗に言われている「2025年の崖」を迎える前から、ERPアプリケーションのクラウド化が本格化しているのです。繰り返し行われてきた5年ごとのインフラ更新作業からの解放が、実はERPをクラウド化するための大きな動機になっています。ERPアプリケーションを動かしているサーバーは一般的に大規模な構成となり、その更新には多大な作業工数がかかります。さらに、インフラの移行がスムーズにできたとしても、新しい環境で問題なく動作するかなどの動作テストにも膨大な手間がかかります。

効率化

「もう1つERPアプリケーションをクラウド化する理由として挙げられるのは、テストや開発環境を作りやすくすることです」とコメントするのは、TISでアプリケーション実行基盤/DBエンジニアリング/クラウド等の基盤領域で多数のリプレイスやクラウドリフトの実績を持つ藤橋氏です。ERPアプリケーションは企業にとって重要な基幹系システムのため、パッチ適用やインフラ更新時にはきめ細かいテストが必要です。テストのために本番環境と同じものを別途用意し、パッチなどを適用して問題ないかを確認する方法も多用されていますが、普段利用しない環境を二重で準備しておくにはコストも手間もかかり、環境の維持は大変です。

その点、クラウドサービスであれば、最小限の構成でテスト環境を準備しておき、必要時のみ本番と同様の構成としてテストを行うことが可能です。これなら二重で準備していたテスト環境のコストも最適化できます。さらに、開発環境の切り出しも物理サーバーより迅速にでき、この点もクラウド化の大きなメリットとなります。

ERPクラウド化への段階的なアプローチ

ここ最近、TISにも現在使い続けているERPをそのままクラウド化できないのでしょうか、との相談が増えています。ERPのような企業の中心となるアプリケーションパッケージの場合、安定して動いているのならば、なるべく手をかけずにそのままクラウド環境にリフトできればありがたいとユーザー側が考えるのは当然です。しかし、いくらそのままリフトすると言っても、OSやデータベースはクラウドインフラでは新しいバージョンになるのが普通です。結局その対応をするのであれば、クラウド化を機にSaaSにしてしまうという選択にもなります。

たとえリフトしてもIaaSより上のインフラ管理はユーザー側に残ります。その点、SaaS化できればインフラ管理からは完全に解放され、システムを利用することにのみ集中できるわけです。このメリットはかなり魅力的です。しかし、SaaS化は基本的にはERPアプリケーションパッケージの乗り換えを意味するので、移行には莫大な手間がかかります。そのため、かかる手間と時間、得られるメリットについては十分な検討が必要です。そこでまずはリフトでインフラ更新から解放され、徐々にSaaS化するという手段もあります。その場合、OCIへのリフトであれば、Oracle Cloudには同じインフラ上で動く網羅的なクラウドアプリケーションがあるので、段階的なSaaS化もしやすくなるでしょう。

「SaaS化すればインフラやデータベースの管理から解放されるので、この点は大きなメリットです。しかしながら、SaaSで提供される標準機能で足りない部分はSaaSの外で開発する必要があり、それが容易に実現できるかも十分に検討しておく必要があります。さらに他システムとの連携も基本的にはインターネット越しのAPI連携となり、オンプレミスに慣れている方々にとっては、初めはクラウドとの違いに戸惑うかもしれません。」と貴志氏。「その時でもOCIならばローコード開発プラットフォームであるAPEXが利用できるので、非常に便利です」とも補足します。

「共有のネットワークのために性能が出にくい、あるいはオンプレミスでExadataを使っていたような場合には、AWSではそれが使えずパフォーマンスが出ないなどということは良くあります。TISではリフトしたERPアプリケーションの運用や、SaaS化した際にどのようにアドオン機能を実現するのか、SaaSと他システムとの連携をどのように実現するかなどについて、既に豊富な情報を持っています。また、ERPアプリケーションのクラウド化で問題になりがちなパフォーマンスの改善についても十分な検討をしています。こういったことにはどう対処したら良いか?という場合、最適な解決方法が提案できます」と藤橋氏も続けます。

ERPのクラウド化、利用目的考えていますか?

ハイブリッドやマルチクラウドの構成において、クラウド化したERPとデータ連携を行う際に、やり取りするデータ量が増えると全体のコストが上がることには注意が必要です。「AWSなどでERPをクラウド化し、データウエアハウスなどがオンプレミスや他のクラウドサービスにある場合、データを転送するのにはコストがかかります。多くのクラウドサービスが、データを入れるにはコストがかからなくても、取り出すには多くのコストがかるのです。そのため大量なデータをクラウドから取り出す仕様ではコストが跳ね上がる事になります。この点についてもOCIでは月に10TBまでは無料でデータを転送でき(注:OCIで利用できるFastConnectと呼ばれる専用線利用の場合は容量無制限で転送可能)、そもそもデータを取り出すコストは他サービスよりもかなり安価な設定になっているので採用検討の余地があります」と藤橋氏は指摘します。

また、貴志氏も「ERPをクラウド化するのに合わせて、適宜クラウドネイティブな機能やサービスを組み合わせて活用するのは得策です。システムやアプリケーションの監視も、クラウドネイティブのサービスを活用したほうがインフラ管理の手間がなく効率的となり、データベースも、IaaSで動かすよりPaaSのほうが構築や運用管理面で効率的なのは間違いありません。ERPを利用する際に、それぞれのクラウドが用意するどのサービスを組み合わせて活用すべきかのノウハウもTISには蓄積されています」と語ります。

運用管理を楽にしたいのか、あるいは運用の自由度を取りたいのかはトレードオフの関係になってしまいます。当たり前ですが、ERPをどのように利用したいかで、どのような構成にすべきかが決まります。そのため、それぞれの企業ごとでクラウド化への最適なアプローチは異なる事になります。しかしながら、OCIにはSaaSがあり、PaaS、IaaSもあり、データベースもAutonomousやExadata Cloudが選べ、さらには自社データセンターも使える@カスタマーもあります。選択肢が多いので最適な回答が見つかる可能性は高いでしょう。

「TISではOracle Databaseはもちろん、オンプレミス、クラウドのアプリケーション製品の経験も豊富で、どのようなニーズにも柔軟に応えられる」と貴志氏も自信を見せます。ERPアプリケーションだけではなく、データベースからインフラまでトータルで対応でき、24時間365日の運用監視も含めたトータルでサポートがTISの特長だと改めて強調していました。

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更新日時:2024年9月11日 15時53分