サイト内検索
サイト内検索を閉じる

#3.Oracleからの脱却先に選ぶべきデータベースとは?データベースクラウド移行の選択肢

クラウドの利用は今や当たり前ですが、企業においては実際にクラウド活用にどのように取り組んでいるのでしょうか。特にデータベースのクラウド化はそれほど進んでいないとの話も耳にします。このコラムでは、普段エンタープライズIT領域でベンダー動向やさまざまなユーザー事例を取材するフリーランスジャーナリストの立場で得られる情報と、日常的に顧客企業と接しているTIS担当者へのインタビューから、クラウド化に取り組む企業のリアルな状況を紐解いていきます。コラム2では、オンプレミスのOracle Databaseのクラウド化でベストなクラウドサービスについて考えてきました。今回は、Oracle Databaseから他のデータベースへ移行するケースについて考えてみます。

Oracle Databaseからの移行先候補の選び方

オンプレミスでOracle Databaseを使っていると、保守費用が高くその保守費用も毎年上がります。そこで皆さんはクラウド化によりコスト削減はできないものかと考えるでしょう。TISでアプリケーション実行基盤やデータベース事業の技術部門を統括している村松氏は「クラウド化によるデータベースのコストを下げるために、オープンソースベースでのデータベースエンジンへの変更を検討して欲しいとの依頼がよくあります。オンプレミスのOracle Databaseをクラウド化する際に、費用対効果を考えデータベースエンジンの変更を含め、適切な選択肢を提案して欲しい」と言います。

①PostgreSQLとMySQL

オープンソースのリレーショナルデータベースとしては、主にPostgreSQLとMySQLがあります。シングル処理などシンプルな使い方であればMySQLでも良いのですが、並列処理や複雑なSQL処理が多いOracle Databaseの移行先としては、やはりPostgreSQLを選ぶことになります。その上で重視するのが、Oracle Databaseとの互換性です。「コミュニティベースのPostgreSQLに機能を追加し、Oracle DatabaseのPL/SQLとの互換性を高めているEDB Postgresは、移行先として有力な候補になる」と村松氏は言います。またPostgreSQLに暗号化機能などを追加しているSRA OSS社のPowerGresも、金融系企業など高い安全性を求める場合に候補となります。

②データベースの周辺環境

もう1つ、移行先を選ぶ際に考慮が必要なのが 、データベースの周辺環境です。アプリケーションサーバーや監視等の共通運用基盤に求められる条件により、移行先のデータベースが決まってくるのです。たとえば、既にアプリケーションなどをAWSやAzureで動かしているようなケースでは、それぞれのクラウドサービスが用意するオープンソースベースのマネージドのデータベースサービス、Amazon AuroraやAzure Database for PostgreSQLが有力な移行先候補となるのです。

ライセンスや保守費用以外に考慮すべきものとは

たしかに商用のOracle Databaseをオープンソースに移行すれば、製品のライセンス、保守費用は安くなります。とはいえEDB PostgreSQLやPowerGresは、オープンソースのPostgreSQLをベースにはしていますが、独自に機能を追加しているため有償版となり、コストもそれなりにかかる製品です。TISでデータベース(DB)エンジニアリング/コンサルタントの立場としてクラウド化の診断や実際の移行や運用を15年以上に渡って手掛けてきたこの道のスペシャリストである貴志氏は「EDB Postgresは、Oracle Databaseとの互換性はかなり高いものがありますが、コスト感覚的にはOracle DatabaseのEnterprise Edition(EE)とStandard Edition(SE)の間くらいではないでしょうか。そのためオンプレミス環境でOracleのSE2を使っていてそれをEDB Postgresに移行するケースでは、それほど大きなコストメリットは出ません。しかし逆に、Oracle Cloud Infrastructure(以下OCI)上でマネージされているOracle Databaseに移行すると、運用コストを大きく抑えられるケースがあります。」と指摘します。

考慮しなければならないのは、ライセンスや保守費用だけではありません。「現状のオンプレミスでどこまで可用性やセキュリティなどの非機能要件に対する作り込みを行っているか、また対象のデータベース上でどれだけのアプリケーションが動いているかで、移行の際の初期費用が大きく変わってきます」と前述の村松氏も指摘します。

利用しているOracle DatabaseがStandard Editionであれば、取り得る非機能要件の構成は限られるので、作り込みは少ないと考えられます。また、Standard Edition であればアプリケーションによるデータベースの利用の仕方も単純なものが多いため、移行の初期費用は比較的小さくなりOracle Databaseからの転換はしやすくなります。

一方、コラム2回目でも触れたようにOracle Database Enterprise Edition(以下Oracle DatabaseのEE)の場合は、クラウド化があまり進んでいません。実際にTISで移行のためのアセスメントを実施すると、Oracle DatabaseのEEからデータベースエンジンを変更してしまうと、コストメリットが発揮できないとの結論に至ることが多いとの事でした。「RACなどの高可用性構成を採用していると、エンジンをPostgreSQLベースに変えた場合、Oracleと同じ非機能要件を満たす構成が作れません。不足する仕組みを独自に作るとなると、大きなコストと手間が係ることになります」と村松氏は言います。

Oracle Databaseからの変更を検討する際難しいのが、アプリケーションの改修規模の見極めです。データベースの移行自体は、3rdパーティーの移行ツールやAWSなどでも変換ツールが用意されており、それらを使えば比較的容易に移行できます。多くの場合、移行の90%以上は自動変換でき、また、手作業で改修しなければならないポイントも、TISであれば過去の実績から既におおよその検討が付いています。しかし、アプリケーションの改修は自動ではできず、PoCなどで検証に手間をかけ、テストも十分に実施することが必要になるのでTISでは顧客からOracle Databaseからの脱却を依頼される際には、必ずアセスメントとPoCのステップを踏むよう提案しています。

TISのOracle Databaseからのクラウド移行支援サービス

また参照系の処理が中心の場合は、比較的簡単にOracle Databaseからの変更ができるケースがあります。TISの貴志氏は「Oracle DatabaseをBI系ツールで利用していたケースでは、データベースエンジンを変更してクライアント側でドライバを替え、設定し直しただけで移行が完了しました。また、Amazon Auroraに移行した案件では、リードレプリカを作り性能要件への対処も容易に実現できたものもあります」とコメントします。

▼TISのAmazon Auroraマイグレーションサービス
https://www.tis.jp/service_solution/uroramigration/

性能要件をどのように満たせば良いかは、移行の際の注意すべきポイントになります。「Oracle Database EEでは、パーティションやコンプレッションを使い、データベースの性能を確保していることが普通です。PostgreSQLにも同様な機能はありますが、それらがしっかりと性能発揮できるかのチェックは欠かせません。データベースエンジンをOracleから替えた場合に、どうやって性能を担保すれば良いかのノウハウについても、TISには十分な蓄積があります」と貴志氏は続けました。

村松氏も「OracleからAuroraなどに移行して、技術的に動かないことはありません。重要なのはアセスメントやPoCで、しっかりとコストシミュレーションすることです。アプリケーションと非機能要件の改修コストによっては、移行の判断ができないことも多いのです」と言います。TISではそのために柔軟な移行アセスメントのサービスを提供しており、さらにPoCのサポートも行っています。アセスメントでこうあるべきとの結果を出すだけではなく、実際の移行支援から移行後の運用保守サービスに至るライフサイクル全般をサポートできるのが、大きな特長となっているのです。 

今回は、クラウド化のタイミングでOracle Databaseからの脱却によるコスト削減を目指した場合に、どのようなアプローチをとるべきかについて考えてきました。現在オンプレミス環境でOracle Database EEを使っているのであれば、やはりシンプルにOCIにリフトするかCloud上のOracle Databasesサービスを利用するのがよさそうですが、現実的にはさまざまな環境下でOracle Databaseは利用されており、クラウド移行やそれに伴ったDatabase エンジンの変更だけではコスト削減にならない可能性もありそうです。

関連するアプリケーションやセキュリティ、可用性などの非機能要件の改修も含め、Databaseエンジンの変更の可否や、どのクラウドサービスを活用するべきかなどは、アセスメントを行いきちんと見極めるべきでしょう。また、移行後の運用までもトータルに考慮して判断する必要があります。「移行に際し何が最適かに迷うことがあれば、早い段階でTISに是非相談して欲しい」と村松氏も言っています。

関連コラム

#4.基幹系システムのデータベースは止められない!ミッションクリティカルナデータベースインフラのクラウドへの「リフト」を検討する。

#5.今こそ取り組むべき!? ERPアプリケーションのクラウド化における事前検討ポイントとは

Oracle、Java及びMySQLは、Oracle Corporation、その子会社及び関連会社の米国及びその他の国における登録商標です。

PAGE TOP

サービスに関する資料をご希望の方は、フォームに必要事項を入力いただき、ご送信ください。

資料を請求する

お問い合わせ
各種お問い合わせページ
お問い合わせフォーム
サービスに関するお問い合わせ
お電話
0800-600-9810
携帯電話
050-5816-9805
受付時間 9:00~12:00 13:00~17:00(土・日・祝日を除く)

更新日時:2024年9月11日 15時50分