01 コンタクトセンター「CTI」
CTI導入による「お客様を知り尽くした電話応対」は、CRMとの連携がカギ
コロナ禍以降、非対面型の購買スタイルの浸透とともに、電話による問い合わせやスマホによる検索も増加傾向に。この需要に応えるため、コールセンターを新設・増設する企業が増えています。
しかし、コールセンター+CTIの導入だけでは、顧客満足を得るには不十分。見落としがちな、CTIとCRMの連携の大切さについて解説します。
コミュニケーション機能を担う顧客接点となるコールセンター
コールセンター(コンタクトセンター)は、モノを販売する小売業から、サービスを提供する金融・保険業まで、多くの顧客を抱えるあらゆる企業にとって極めて重要な顧客接点です。
近年は、増大する電話応対オペレーターの稼働負荷を減らすため、FAQやチャットボットへ誘導し、自動化を図る企業も増えています。しかし、1対1で顧客と会話ができる電話窓口は、将来的な会社やブランドの「ファン」を獲得するチャンスを持つ場です。
わざわざ電話をかけてくる方は、その理由に関わらず“熱量が高い”方である可能性は高いでしょう。電話の内容が不満やクレームであったとしても、オペレーターとのやり取りの結果、満足してもらえれば、会社やブランドへの信頼感を獲得するきっかけとなり得ます。その方が、将来的にクチコミでファンを増やしてくれる優良顧客になってくれる可能性は十分にあります。
よく、コールセンターは利益を産まないコストセンターの一種に分類されますが、電話応対による満足度次第で、利益拡大に貢献するプロフィットセンターに変化できる可能性を秘めています。
電話の相手の属性情報を画面にポップアップするCTI
このように重要なコミュニケーション機能を担うコールセンターですが、電話応対の品質を向上させるためには、CTIの活用が効果的です。これはComputer Telephony Integrationの略語で、コンピュータと電話が融合したシステムやサービスの総称です。
CTIの重要な機能の一つが、発信者の電話番号に基づき、オペレーターの目の前にあるディスプレイに、顧客の属性情報がポップアップ表示されるというもの。オペレーターはこの情報を確認しながら、適切な電話応対ができます。
アプリやECサイトで、会員IDやCookieに基づき情報を出し分けるように、電話の1対1の会話においても、CTIによって顧客一人ひとりの属性に基づく個別応対ができるようになります。
近年は、特にクラウド型のCTIサービスの需要が高まっています。クラウドの利点を生かし、複数拠点を一つの仮想コールセンターとして運用したり、在宅オペレーターに着信を振り分けたりと、働き方改革にもつながることがクラウドCTI普及の追い風となっています。
「CTIを入れるだけ」では、理想的な電話応対の実現には不十分
しかしCTIを導入しただけでは、まだ十分とは言えません。見落としがちなのが、CTI単独では、画面上に十分リッチな情報をポップアップ表示できないという点です。氏名・住所・生年月日といった基礎情報だけでは不十分であり、適切な電話応対のためには、さらに次のような情報が必要です。
・所有している製品名、購入日
・過去の購入履歴(店舗およびECサイト)
・前回問い合わせた内容
・よく利用する店舗名
これら情報を確認できないと、お客様は電話をかけるたびに、所有している製品名やトラブルの内容などの質問を受け、ストレスにつながります。また、「自分のことを分かってくれていない」という不満から、会社やブランドへの信頼を損ないかねません。
これを防ぐには、CTIを「CRM」と連携させることが重要です。では、このCRMとは何なのでしょうか?
CTI導入とセットで考えたい全社横断的なCRMの構築
CRMはCustomer Relationship Managementの略語で、日本語では「顧客関係管理」を意味しています。CRMは顧客情報を統合したデータベースをイメージされがちですが、正確にはそうではありません。CRMの意味が『顧客“関係”管理』であるという点が注目すべきポイントです。
つまりCRMとは、顧客と良好な関係を長期間にわたって築き、その会社の製品やサービスを使い続けてもらうための方法・仕組みそのものを指しています。
それを実現していく具体的手段として、顧客情報を統合するデータベースや、自社のスマホアプリ、マーケティングオートメーション(MA)ツールなどのITツールがあります。
CRMは単一のパッケージ製品やクラウドサービスを入れるだけで、完成するわけではありません。現在、自社のどの事業・サービスで、どのような顧客接点があるかを洗い出し、どのような種類の情報をどのように蓄積・管理しているかを把握する必要があります。
その上で、既存の個々のデータ基盤を撤廃して新たな統合データ基盤を構築する、あるいは既存のデータ基盤を生かしつつ情報のみをリアルタイム集約する仕組みを構築するといった、その会社に最も適した方法でインテグレーションを実施します。
そして最終的に、CRMで管理する集約された顧客情報をCTIに連携させることで、電話応対時のポップアップ画面をリッチ化でき、適切な電話応対につながります。
TISならクラウドCTIからCRM構築までワンストップ対応
CTIとCRMの連携は、コールセンターにとって理想的な形ですが、その進め方はお客様の事業規模や、コンタクトポイントの種類・規模、蓄積されている情報の特性などによって異なってきます。
TISは、クラウド型CTIサービスの提供はもちろん、全社横断的なCRM構築のためのコンサルティングからインテグレーションまで、ワンストップで対応が可能です。
CRMを短期導入したいお客様向けには、国内外で定評があるCRMパッケージ/サービス「Salesforce」や「FastHelp」などを中核として、社内のさまざまなシステム・データ基盤をつなぐインテグレーションを実施する方法も選択可能です。
さらにTISでは、コールセンターのDX化に役立つFAQ・AIチャットツール、音声認識による録音データのテキスト化などのツールもご用意しています。
ユニファイドコマース実現の重要なピースとなるCTI+CRM
TISは小売業のお客様に向けて、消費者がどの顧客接点で商品を購入しても、“自分のことを知り尽くした”心地よい対応が受けられる「ユニファイドコマース」を提唱しています。
その実現のために欠かせないのが、企業のあらゆる顧客接点において、顧客一人ひとりの属性や購買履歴、関心のある商品といった同じ情報を共有できる仕組みづくりです。顧客接点の中で、収益に直結する店舗やECサイトのユニファイドコマース化が注目されがちですが、コールセンターは会社やブランドの信頼獲得のために重要な存在。他の顧客接点と同じように、統合された情報を共有できる仕組みづくりを急ぐ必要があります。
つまり、今回お話ししたCTIとCRMの連携は、電話応対の品質の向上による顧客とのコミュニケーションの強化という側面と、ユニファイドコマースを実現するための重要なピースという側面があります。
一昔前のコールセンターは、1ヵ所で情報管理を完結させる傾向でしたが、今や外のすべての顧客接点で得た情報と連携しなければ、お客様に満足してもらえない時代です。それを可能にするのがCTIとCRMとの連携であり、それは他社との競争を勝ち抜くための大きな武器となるはずです。