統合型デジタルマーケティングプロジェクト成功のコツ② ~実践ステップ編~
統合型デジタルマーケティングを成功させるために重要なことは、戦略、分析、デザイン、IT基盤の各チームを取りまとめること。これについてはデジタルマーケティング成功のコツ①(体制づくり編)で述べました。
今回は、統合型デジタルマーケティングを実践するまでのステップを分かりやすく解説します。
1.はじめに、統合型デジタルマーケティング実施を段階的に考えよう
統合型デジタルマーケティングとは、個々の事業部門が個々のチャネルでマーケティング活動を進めるものではなく、全社横断的な組織のもとに、一体となってマーケティング活動を進めるものです。
※参考記事「マーケ@ITが考えるデジタルマーケティング」
では、どのようにして統合型デジタルマーケティングを実施していけばよいのでしょうか。
デジタルマーケティングとは、仕組みを取り入れたらすべて上手くいくものではなく、施策の検討、実施、分析、再検討というPDCAのサイクルを回しながら実現するもので、一足飛びに「デジタルマーケティング」という何かが作り上げられるものではありません。データをもとに、分析しながら進めていくものです。
つまり、まずはデータがなければ始まりません。すでになんらかの分析できるデータがあれば分析を始めるところから進めることができますが、データがない場合は、データを集める仕組みを作るところから始める必要があるわけです。
今回は、何もデータを持っていないところから始める場合について考えて見ましょう。進め方を大きく分類すると3つのステップになります。ステップ1「全体構想」、ステップ2「基盤の構築」、ステップ3「施策実践」になります。先にも述べたように、企業によってすでに整っている部分や、重点的に手を付けたい部分は異なりますので、進め方の一例と考えて、このステップを参考に自社に合わせて進めてみてください。ここから先は実施のステップの例を紹介します。
2.ステップ1「全体構想」
最初のステップでは、主に戦略を中心に全体構想の検討を進めていきます。
まずは会社の経営戦略をベースに、マーケティングにおける戦略を明確にし、方向性を決めていきます。同時に、As-Isの調査を実施し、分析、デザイン、ITのそれぞれの課題を明確にしていきます。全体戦略とAs-Isの調査を元に、デジタルマーケティングで実現する全体像と施策の全体像を検討し、その概要、Webサイトのコンセプトや各Webサイトの位置づけ・役割、施策のどこを「KGI」、「KPI」とするのか…などを検討します。
こうした指標を含めて、社内のプロジェクトチームのマネジメントや関係部署とのコンセンサスを形成し、共通のゴールの認識を合わせていきます。また、これまでにない横断的な組織の必要性も出てくるため、それを実現する社内体制も併せて検討・準備していくことになります。
3.ステップ2「基盤構築」
全体構想が見えてきたら、次はそれ実践するための基盤の検討・構築に移ります。
全体構想で検討した、全体像を実現するために必要な基盤は何か?分析に必要となるデータ、ツールは何か?複数のツールを導入する場合、親和性が良いものは何か?施策を実現するために最適なデザインは何か?など、デジタルマーケティングを実践するために必要な基盤を検討していきます。
例えば、Webサイトを誰が、どのくらいの頻度で更新するかということから、スクラッチで基盤を構築するのがいいか、CMSを導入するのがいいかを考えます。仮にCMSを導入するとした場合に、規模感などを考慮して、どのCMSが最適なのかを考えていく必要があります。
こうしたITの基盤構築の他に、施策を実現し、その効果を測定するためのPDCAのフレームを考える必要があります。また、デザインについても、マルチデバイス対応は必須になるでしょう。ユーザーが使う主なデバイスは何かを考え、そのデバイスを中心にデザインを考えることも必要になります。こうした、デジタルマーケティングを実践に向けた準備をステップ2では行います。
4.ステップ3「施策構築」
“基盤”が整ったら、いよいよデジタルマーケティングの実践です。全体構想で検討した施策を基盤の上で実現していきます。例えば、メールマーケティング、Webコンテンツを使ったコンテンツマーケティング、顧客一人ひとりの嗜好に合わせて展開するOne to Oneマーケティング、オンラインとオフラインを連携して展開するO2O(Online to Offline)マーケティングなどのマーケティング施策があげられます。
施策を実施する一方で、その施策の効果検証も合わせて実施していきます。構想段階で設定した「KGI」「KPI」を基準として、「KPI」の達成度を分析結果から確認していくことになります。ここで施策・検証のPDCAサイクルを運用に乗せていきます。PDCAを繰り返し「KPI」の達成度を確認しながら、「KGI」を達成していくことになります。
最終的には各タッチポイントで得られるデータを集約し、特に店舗とネットの情報を統合することでオムニチャネルの実現を目指します。自社のWEBサイト(オウンドメディア)だけでなく、SNS、外部ECサイトなどのWebメディアに加え、リアルの店舗などがその例です。
このステップでは、これらすべての情報をすべて一元的に管理することにより、顧客はWeb・リアル店舗など、どのタッチポイントでもシームレスにサービスを受けることができるようになります。これが、統合型デジタルマーケティングの1つのゴールの形となります。
まとめ
今回は統合型デジタルマーケティングを理想的に運用するための、実施ステップを紹介しました。ここで取り上げた3つのステップは概略の一例となります。
もちろん、構想を開始してから、施策を開始するまでにはそれなりの時間もかかりますので、取り巻く状況も変化するでしょう。各ステップを踏みつつもアジャイル的な要素を組み合わせ、必要に応じて計画を修正していく、つまりプロジェクト自体もPDCAを回すイメージを持つ必要があります。
そのためには、情報システム部だけではなく、マーケティング部門などの各現場の部門もプロジェクトに積極的に、かつ継続的に参加することが求められます。
統合型デジタルマーケティングのプロジェクトを成功に導くには、PDCAのサイクルを常に意識することと、全員参加で推進することが重要だといえます。