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プライベートDMPの魅力と甘いワナ ~導入の裏の成功と失敗~

大手化粧品メーカーなどが成果を出していることから、近年、プライベートDMP(Data Management Platform)に注目が集まっています。その大きなメリットは、自社内外の顧客に関するデータを集約・活用して、マーケティング施策の効果を最大化すること。
例えば、社内の購買履歴・各種プロモーション結果等の様々なユーザー情報を集約し、SNSなど外部の属性情報や行動ログと組み合わせることで、大きな効果を発揮すると考えられています。しかし、その導入には大きな “落とし穴”も──。

そこで本記事では、マーケティング部門、情報システム部門の担当者が知っておくべき、プライベートDMPの基礎知識と注意点について解説します。

1.プライベートDMPになぜ、注目が集まっているのか?

(1)プライベートDMP人気の背景とは

近年、企業のマーケティングやシステム担当者の間で注目されているプライベートDMP。2014年頃から大手企業の成功事例を目にする機会が増えたことで、「心動かされている」というマーケティング部門の方も多いかもしれません。
そもそも「DMP」とは、インターネット広告を最適な人向けに発信できるように構築されたプラットフォームです。主に広告配信や媒体管理側のサービスとして提供され、例えばサイトの閲覧回数やSNSの行動情報データを集積し、それを広告配信のターゲティングに利用する仕組みです。

一方、「プライベートDMP」は、自社で蓄積した顧客情報や購買情報・サービス履歴・属性データなどに潜在顧客の外部情報も加えて一元的に管理できる仕組みです。外部情報として、例えばSNS上の閲覧履歴や発言内容といったビッグデータまで活用できるところが、従来のCRMツールとは大きく異なる点で、今後も幅広いマーケティング活用が期待されています。
では、どのように活用されているのか。2015年の最新成功事例を簡単にご紹介します。

多くの人が利用している美容・化粧品通販。
この分野で顧客接点を強化することで、競争力強化や売上向上に向け、プライベートDMPを採用したのが、化粧品・健康食品の大手メーカーである株式会社ファンケル。その効果を伝えるニュースが報じられました。

すでに2009年からプライベートDMPを導入しているファンケル。例えばECサイトにて「ECサイトに訪れ、一旦カートに商品を入れたにも関わらず購入に至らなかった」顧客に対する施策として、レコメンド機能を活用し、顧客に適した商品を紹介。導入前と比べてコンバージョン率が最大で110%、購入単価が最大約130%向上したという効果が出たとのこと。
なお、2009年にファンケルがプライベートDMPを導入する際には、Webサイトの全面リニューアルや機能の改善、販売促進施策の強化、運用効率の改善を行っています。そして顧客の購買情報や属性情報をベースにクロスセルのための商品レコメンド施策を実施した結果、成功へとつながりました。

また、この蓄積されたデータをもとに、サイトには訪問しているが商品の購入には至っていない潜在顧客や、休眠顧客に対する有効な接点としてプライベートDMPのオプション機能である広告配信を行う予定であることを発表しています。ファンケルはライベートDMPを活用することで、もともとあったシステムや資産の有効活用が行えること、さらにより簡単に広告配信が行えることが大きい魅力だと語っています。

※プライベートDMPのパッケージにより機能は異なる。ファンケルが利用しているプライベートDMPにはオプションで広告配信機能が搭載されている。



(2)プライベートDMPの効果とメリットについて

では、プライベートDMPとは一体どのような効果やメリットを得られるツールなのか、そのポイントを見ていきましょう。

ポイント1:データ統合・一元管理

プライベートDMPでは、自社データと外部データを統合し、一元管理、分析することが可能です。顧客情報、購買、販促、閲覧履歴、POSといった自社データに加え、外部データであるSNSやサードパーティ経由のデータも管理し、総合的に分析することが可能です。広告以外にCMSと連携したパーソナライゼーションや顧客分析・商品開発といった幅広い分野に活用できます。

ポイント2:顧客行動(履歴)の可視化

ポイント1で「データ統合」できると述べましたが、その結果、ネット上での顧客行動を一元的に把握することができます。例えばこのツールによって自社サイトやSNS経由で問い合わせをしてきた見込み客の興味・関心を把握できます。適切に見込み客情報を知ることで、成約率を向上につなげられます。

ポイント3:マーケティング施策のPDCA高速化

マーケティング施策に対するデモグラ・購買・広告反応・ソーシャルデータなど、ユーザーの反応や効果が可視化できることで、効果検証が精緻に行えるようになります。その結果、より細かくセグメント化されたユーザーに対して最適なマーケティングアプローチの実施が可能になります。結果、マーケティング施策の効果検証から改善までが効率的に行えるようになり、PDCAサイクルの高速化が実現します。

ポイント4:マーケティング施策の最適化

ポイント1~3で紹介したように、プライベートDMPは、企業内部に散在するデータを統合し、活用・可視化し、目的達成のために改善のサイクルが回せるようになることに意味があります。運用し続けることで、より精度の高いマーケティング施策が行えるようになるのです。

(3)プライベートDMPの導入による問題点とは

導入によるメリットが大きいプライベートDMPですが、導入方法によっては無駄になることがあります。
例えば消費材のECサイトを運用しているような会社がプライベートDMPを導入した場合、よくあるケースとしてはECサイト上における広告アプローチ施策は成果が出しやすいのですが、実際の店舗に来店した顧客に対する施策がうまくいかないといったことが起きたりします。
その理由として、ECサイトに訪れる顧客と実際の店舗で購買する顧客どちらも同じようなマーケティング施策をしてしまい、せっかくプライベートDMPを入れておきながら、使いこなせないという事実に突き当ります。プライベートDMPのメリットは「顧客ごとにアプローチの方法を分けて施策できる」という点であり、どうやってプライベートDMPを活用すればいいのかという点が現場の担当者が抱える悩みとなります。

もう1つは、ECサイトや実店舗の顧客情報が別部署で管理されているなど、事業部別にバラバラにデータを所有していることです。上記「ポイント4」のように、企業の事業部によってそれぞれの所有するデータは異なります。これらを一元管理することで初めて行えるマーケティング施策があります。
例えば、ECサイト顧客を実際の店舗へ足を運ばせるような施策や、逆に店舗からECサイトへと誘導する施策です。しかし、このような施策を実施できないという問題です。

ではなぜ、このように無駄や運用という問題が起きるのでしょうか。それには様々な課題があることがわかってきました。次章でそれをご紹介します。

2.プライベートDMP人気で見落とされていた“ワナ”とは?

(1)プライベートDMP導入で失敗したケース

「せっかくプライベートDMPを導入しながらうまく活用できない」…実は、そんな企業も実在します。ここでは、そのような失敗例を紹介しますので、その理由を考えてみましょう。

【製菓メーカーA社の場合】

全国展開する製菓メーカーA社。ロングセラー商品がいくつもあるものの最近、後発のメーカーに押され気味で売れ行きが伸びません。そこで主力製品のテコ入れ策の1つとして、マーケティング部門主導でプライベートDMPを導入することになりました。

ところが、プライベートDMPの活用には、企業内各部署にあるデータの収集やタグを整理するなど、様々な調整をしなければなりません。マーケティング部門だけではなく、購買・販促、システム管理部といった横のつながりも一緒に考える必要があったのです。
例えばデータの取り扱い1つとっても各部署や責任者の連携、責任の範囲の明確化といった問題が発生しました。それだけではなくセキュリティやプライバシーといった想定していなかった問題にも発展。マーケティング部門だけではもはや解決できる問題を超えていたのです。

システム管理部門の力を借りようとしたのですが、実は導入目的と達成したい内容が不明確であることが判明し、そもそも何のために導入する必要があるのかという根本的な結果に行き当たりました。
本来は自社データと外部データを一元管理して最適なマーケティング施策を行うはずだったのですが、予想外に敷居が高かったのです。特に『自社データを連携させる』という部分は予想以上に難航しました。そして結果的に導入をあきらめざるを得なくなりました。

(2)導入に失敗した理由とは

このような失敗事例はどの企業にでも起こりうる問題です。実はプライベートDMPには乗り越えなければならない壁がいくつもあります。
その1つが、自社内のデータ連携です。上記の失敗事例では、部門間の連携や全社的なデータ統合が難しいという現実を示しています。その導入・運用には、マーケティング部門だけでなく販促やシステム部など様々な部門が関係する、大きなプロジェクトとして進めなければならないのです。

またもう1つは、Webサイトにおけるタグの管理の問題です。企業の多くが使用する各種デジタルマーケティングツールの大多数は、その実装にタグを使用しています。そしてプライベートDMP上で多くのマーケティングツールを使う必要があるならば、それぞれのタグを入力するなど、データ連携プログラムを用意する必要があります。
今や、アクセス解析や行動ターゲティング・リターゲティング・コンバージョントラッキングなど、Webサイトはその目的によってタグの追加や管理が必要です。今後は、いかにタグをマネジメントしていくかということも、プライベートDMP導入を検討する上では欠かせない課題となるのです。

3.プライベートDMP導入の時に知っておくべきポイントとは?

(1)導入の目的を明確化する

まず何と言っても、導入の目的を明確にして、すべての部署でも共有できるようにすることです。各部署単位の目線で導入を考えることは避けなければなりません。
上記ケーススタディではマーケティング部門の失敗例でしたが、情報システム部門視点のみで導入・運用を行った場合、どんな問題が起きるでしょうか。いざ活用しようとしても、マーケティング部門で活用しやすいものとは限らない可能性もあります。システム部門はデータを効率化したい、マーケティング部門はマーケテイング戦略の1つとして必要…というように、思惑が異なっていれば、その導入は成功につながらないでしょう。
このようなことがないよう、業務設計やそれらに必要な要件定義がなされることや、他部署と一緒に導入目的を共有することが重要です。

(2) メリットとデメリットを整理する

次に、目的にもとづき、現状の企業体制の中でどの程度のメリットとデメリットがあるのかを考えてみる必要があります。「多くの企業がプライベートDMPを導入している」と焦るのもわかりますが、まずは目的達成に向けて動いた時に、現実的に今導入する時期なのかどうか、という判断も必要になってきます。
また、最も重要なのは「目的を達成すること」です。そのためにも、導入によりどのようなメリットとデメリットがあるのかを、導入前によく把握して、プライベートDMP以外にも、実現できる手段があるかもしれない、というところまで検討しておく必要があります。

(3)組織としてどう取り組むかを決める

プライベートDMP導入で問題になることの多くは、前章でも述べた企業の構造や体質にあります。システム導入はシステム部へ、マーケティング戦略はマーケティング部へ、商品開発は商品開発部へ…というように、組織がバラバラでは必ず失敗してしまうことでしょう。
プライベートDMPは企業内のデータを一元化して効率的に運用するものです。そのため、組織としてどのように取り組んでいくのか、その体制作りが必須となります。

社内でどのようにプライベートDMP導入のための組織連動を行うのか。1つの部門だけが決定していくのではなく、システム部とマーケティング部双方が関わり、導入検討を納得した上で進めていくことが成功への道です。導入コストが高額になりがちですが、段階を踏んで導入していく方法もありますので、組織としてどう取り組むかをまずは考えてみてはいかがでしょうか。
以前に掲載した記事、「統合型デジタルマーケティングプロジェクト成功のコツ①~体制づくり編~」もぜひ、参考にしてください。

まとめ プライベートDMP導入は企業の見えない財産になる

プライベートDMPは、ある意味“究極の顧客解析ツール”かもしれません。しかし、あいまいなゴールに向かい、“万能のツール”のように捉えてしまうと失敗例のようになりかねません。
本末転倒なのは、当初の目的を見失って、膨大な費用のロスを生むことです。そうならないためにも、前章で取り上げたポイントをぜひ、参考にしてください。

(1)導入の目的を明確化する
(2)デメリットとメリットを整理する
(3)組織としてどう取り組むか決める

また付け加えると、組織や体質にあった規模やステージから導入を検討すべきです。仮に導入に至らなかった場合でも、必ず企業のナレッジになるからです。このようなツールの導入を機に、業務改善の見直しや商品開発におけるプロセスなど、企業を横断して考えることは必ずその企業の財産になるからです。
導入には色々な障壁がありますが、すべて無駄にはなりません。導入の際には今回紹介したような成功事例・失敗事例のほか、有識者の意見、システム導入に携わったことがある企業などの意見を参考にして、自社に最適な選択ができるよう、ご検討ください。

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更新日時:2023年10月4日 20時22分