CMSクロニクル ~マーケティングツールとしての進化の歴史~
「企業のWebサイト」は今やその企業の顔であり、顧客接点として重要性が増しています。そのため“情報が古いまま”では、その企業への印象も悪くなってしまう可能性があります。そこで、タイムリーにWebサイトの情報を変更したり、コンテンツを制作したりしたいというニーズに応えたことで広まっているのがCMS(コンテンツ・マネージメント・システム)です。
最近では、マーケティングに欠かせないツールと考えられがちですが、システム部門の担当者も正しく認識し、これまでの知見と組み合わせた活用を検討することが、統合型デジタルマーケティング時代の今、必要です。
では、CMSがその登場から今日までどのような進化をたどり、企業がCMSに求める役割がどのように変化してきたのか、そのトレンドを追ってみましょう。
1.2000年~2005年頃 CMSの黎明期
日本でCMSが本格的に普及しはじめたのは2005年頃からだといわれています。
これ以前の「CMS的製品」としては、「VIGNETTE」「TeamSite」「OPENTEXT」など、C++やJavaをベースとしたものが見られましたが、今日のCMSの「直系の祖先」と呼べるものはおそらく2000年8月にドイツに登場した「TYPO3」でしょう。
TYPO3はPHPというプログラミング言語で書かれたオープンソースソフトウェア(OSS)のCMSで、MySQLなどのデータベースとの互換性も高く、ドイツからヨーロッパを中心に広く普及しました。 その後、同じくPHPで書かれたDrupal、XOOPS、WordPressなどが登場しました。
「誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行える」というOSSの特長は、サードパーティや個人クリエイターなどによってテンプレートやプラグインが豊富に開発され、利便性が向上し、その結果利用者が増えてシェアが高まる、という好循環をもたらすことになります。
今日でも、人気の高い(世界的普及率の高い)CMSのほとんどはOSSです。この時代に生まれたは老舗CMSとして現在も世界的に高いシェアを誇っており、ユーザーグループのコミュニティによって今日でもバージョンアップが続けられています。
この頃のCMSは、日本ではまだ「知る人ぞ知る」という程度で、CMSについて多少知識のある人からも「HTMLやCSS、あるいはJavaといったWebデザインに関する専門知識のない人でもブログやWebサイトの運用・管理ができる簡易ツール」という見られ方が一般的だったようです。こうした流れをまとめると以下のようになります。
2000年以前
- VIGNETTE、TeamSite、OPENTEXTなどC++やJavaベースの「CMSの原型」的な製品が登場
2000年
- PHPで書かれたTYPO3をリリース ヨーロッパで普及が加速
2001年
- Drupal オープンソース・プロジェクトとなる
- Movable Type 1.0をリリース
2002年
- XOOPS 1.3.0 をリリース。初の正規安定版となる
- Movable Type2.2~2.5をリリース。 国際化対応、トラックバック機能などブログの基本機能が整う
2003年
- WordPress バージョン0.70をリリース
- Concrete バージョン1をリリース
2004年
- Concrete バージョン2をリリース
- Movable Type3.1をリリース。日本語対応、予約投稿機能、動的記事の生成機能などを実装
2.2005年~2009年頃 CMSの基本機能が充実、コーポレートサイトにも徐々に採用が進む
2005年頃、日本では個人ブログが流行し、「商用ではない、個人による情報発信」が盛んに行われるようになりました。その結果、Webデザイン経験のない一般個人がブログを管理するというニーズが増え、CMSの人気は一気に火がつきます。
この頃、ひときわ注目を集めたCMSが「Movable Type」でした。バージョン3.1からは日本語対応し、トラックバック機能や予約投稿機能などブログに求められる機能のほとんどがそろっています。またプラグインの充実ぶりも人気の大きな理由でした。
この頃からコーポレートサイトなどにもCMSを採用する動きがみられるようになります。しかし、ユーザー権限の設定やセキュリティの問題など、まだ企業が本格的なコーポレートサイトを運用していくうえで不安な面もありました。
これを受け、2008年頃から主要なオープンソース系CMSが立て続けにバージョンアップを行い、本格的な商用サイト、コーポレートサイトの運用に耐えられるよう、CMSは飛躍的な進化を遂げていきます。
2005年…ブログブーム
- Concrete バージョン3をリリース。アメリカの商用CMS市場でイニシアチブを握る
2008年…ツイッターブーム
- WordPress、この年にバージョン2.5~2.7までを立て続けにリリース。インターフェースの刷新に加えwebのどこからでも記事を書ける機能も搭載
- concrete、構造を刷新し「concrete5」をリリース
- Movable Type 4.0リリース。Webサイト全体を管理できるCMSとして進化
3.2010年~2015年頃 CMSがコーポレートサイトの主流となり、マーケティングツールとして認知される
2010~2015年頃のIT系の情報サイトでは、企業向けにCMS導入を勧める記事が目立つようになります。このことにより、それまで企業がWebサイト制作に不満を感じていた、下記の問題が解消できる点が広く認知されるようになりました。
- Web制作会社の制作費が高い
- サイトの制作・更新に時間がかかる
- 制作方針決定~発注~制作~承認までのタイムスパンが長い
主要なCMSも、きめ細かいユーザー権限の設定や公開の承認フロー、バージョン管理などコーポレートサイト運用に役立つ機能を次々と実装していきます。
その結果、CMSは「運用者とユーザー」を直接結ぶことに注目されるようになりました。つまり、従来は外部に依頼しなくてはできなかったWeb解析などを、運用者が直接行えるようになったことでユーザーの動向がつかめるようになった結果、ユーザーのニーズに合わせたコンテンツ展開ができるようになっているのです。
ビジネスにスピードが求められる時代、このようにすばやく打ち手が打てることで、マーケティング面でも大いに効果を発揮しているのが現状です。
2010年…「まとめ」サービスがブレイク
- Adobe、Day Softwareを買収
2011年…Facebook、日本で大ブレイク
- ヒューレットパッカード、Autonomyを買収
2012年…「ステマ」ブーム
- オラクル、Fatwireを買収
2014年
- HTML5.0がメインストリームに
- モバイルファースト
- レスポンシブデザイン
そしてこの5年間を振り返ると、巨大ITベンダーが次々にCMSを買収した時期でもありました。
その理由の1つは、大企業がコーポレートサイトや商用サイトを運営するためにCMSを利用するようになり、従来にない大規模サイトに対応できるCMSが必要とされるようになったことです。
もう1つは、CMSとマーケティングツール(マーケティングオートメーション機能やパーソナライゼーション機能、アクセス解析機能、キャンペーンマネジメント機能など)を連携させることにより、CMSを統合型デジタルマーケティングのプラットフォームにするという目的のためです。
こうした経緯から、今日では、CMSは単に「Webサイトを運用管理するためのツール」のみならず、統合型デジタルマーケティングの「マーケティングツール」として選定する企業が増えてきています。
4. これからのCMSのトレンドは「インバウンドマーケティング」
2012年頃から始まった、「マーケティングツールとしてのCMS」の流れは今後数年持続し、CMSのメインストリームとなりそうです。
近年のWebマーケティングはインバウンドマーケティングに大きくシフトしてきています。これは、従来の広告出稿を中心としたマーケティングではなく、「消費者に見つけてもらい、好感度を高める」という囲い込み型のマーケティングです。従来のマーケティングよりも、「消費者の主体性が高いマーケティング」ともいえるでしょう。
CMSによるWebサイト運用は、企業が潜在顧客を引きつけ、見込み客へと育成するための長くデリケートなコンテンツサービスが実施しやすいという特徴があります。これはユーザーが求めているサービスやコンテンツをつかみ、ユーザーの好むインターフェースでユーザーが喜ぶ情報を次々と提供していくといった「ユーザーに寄り添ったサイト運用がしやすい」という理由からです。
このほか、今日の主要なCMSにはユーザーに自社サイトを「見つけてもらう」という目的のLPO(ランディングページ最適化)機能、EFO(エントリーフォーム最適化)機能、ソーシャルメディアとの連携機能など、多くのマーケティングツールとして使える機能の実装が進んでいます。
まとめ
かつては「専門知識がなくてもサイト運用ができる」ことを目的としていたCMS。
現代でもそういう使い方は可能ですが、企業が導入する際には、マーケティング部門とシステム部門双方の知見を合わせ、統合デジタルマーケティングという観点から選定すべき。さらにその上で、十分な知識を持った専門家のアドバイスを聞いてから導入することがおすすめです。