【エンジニアが語る】re:Invent 2018 参加レポート

AWSが米国・ラスベガスで開催する年に1度の大規模カンファレンス「re:Invent」では、毎年100を軽々と超える、非常に多くの新サービスとアップデート(新機能)が発表されます。アップデートの範囲は、単なるインフラだけではなく、DevOps、AI、IoT、機械学習などアプリケーションのレイヤーまで多岐に及びます。
これらのアップデートをキャッチアップすることは、技術力のアップにとどまらず、IT業界全体の潮流を知り、産業全体が向かうべき道を知ることにも繋がります。
まだAWSが東京リージョンを開設したばかりの頃は、VPCやEC2といったIaaS、すなわち従来のオンプレミスのサーバ資源をそのまま代替する手段さえを考えていれば良い時代でした。
その当時、AWSが持たれていたイメージはまさにインフラであり、インフラエンジニアが既存のオンプレミスの延長としてキャッチアップするものと見られていました。
しかし、今は違います。今回のアップデート内容は、多くがアプリケーションのレイヤーに関連するものです。
もはや、AWSは以前のようにインフラエンジニアだけが知っていれば良いクラウドサービスではありません。全てのエンジニアが今回のアップデートやサービスの内容を知り、これらのサービスを使って何を実現できるのかと考えることが、各々がより価値のあるサービスを提供することに繋がり、最終的には産業全体の発展に繋がっていくことでしょう。
今年の「re:Invent」は、我々にどんな恩恵をもたらし、そして、産業全体にどんな変革をもたらすのでしょうか。現地に赴いたエンジニアからのレポートをお届けします。

レポート1. エンジニアを夢中にさせるAWS
AWSの最高経営責任者(CEO)のAndy Jassy氏は、基調講演の中で、IDCのクラウド市場シェア調査の結果、AWSが全世界で51.80%と過半数を超えるシェアを獲得していることを強調しました。過半数を占めるシェアを獲得しているということの意味は、単にトップシェアというだけではなく、この市場でAWSに関わるエンジニアもまた過半数近くに及ぶことを意味します。現に今回のイベントでも、世界各国から非常に数多くのエンジニアが会場に集まり、Andy Jassy氏の基調講演を食い入るような目で見つめていました。AWSは、そんなエンジニアの期待に応えたアップデートを次々に発表し、その心を掴んでいました。AWSが唱える「アマゾン・クラウド・マジック」の魔法は、今年もエンジニアを虜にし、飽くなき探究心に火を付けています。
それでは、どんなアップデートがエンジニアを夢中にさせたのでしょうか。

レポート2. 未開の地に踏み込んだAWS
「re:Invent 2018」で発表された新サービスやアップデートの中で最も目立ったことは、AWSがこれまで進出していなかった領域に足を踏み入れ、新たな進化や市場を開拓しようとする様が垣間見えたことでしょう。
コンピューティングの分野では、AWSが自社でハードウェアを開発することを宣言し、独自のCPUである「AWS Graviton Processor」「AWS Inferentia」が発表されました。「AWS Graviton Processor」を搭載した「A1 EC2 インスタンス」の発表は、ハードウェアも仮想サーバインスタンスも全て自社で賄おうとするAWSの意志の表れであり、これまでのCPUの進化の系譜とは分岐した、AWSならではの進化が始まることを予感させるものでした。
さらに、人工衛星が観測したデータをクラウド上で容易に利用できるサービスとして「AWS Ground Station」が登場しました。例えば、この「AWS Ground Station」と既存の「Amazon SageMaker」等の機械学習向けサービスを連携すれば、衛星を使った観測から分析までをクラウドだけで実現できるようになります。我々の手元から遥か彼方にある衛星のデータが簡単に使えるなんて、ロマンチックな話です。
また、AWSのクラウドと同等の機能をオンプレミスでも使えるようにする「AWS Outposts」は、プライベートクラウドの分野でも覇権を取ろうとするAWSの思惑が感じられる発表でした。この分野では、既に「Azure Stack」や「GKE on-prem」が先行していますが、そこに「AWS Outposts」が加わったことで、ますます目が離せなくなってきました。
AWSが新たな進化をしたことで、これまでエンジニアが手を出すことが難しかった開発が、AWSによって簡単に可能となりました。AWSが新たに開拓した市場には、無限の可能性があり、我々もまた好奇心と想像を膨らませています。新たなサービスやビジネスのアイデアが止まりません。

レポート3. 機械学習に力を入れたAWS
「re:Invent2018」では、AWSの機械学習に関連するサービスの発表が続きました。昨今、AWSも機械学習の実現手段として名を馳せていますが、機械学習やその応用は、どうしても既存のアプリケーションのモデルとは異なる開発になることが多く、学習にも時間がかかっていました。しかし、今回のアップデートでかなり敷居が下がったようです。
今回のイベントでは、機械学習のデジタルトレーニングの無料提供が発表され、さらに「Amazon SageMaker Neo」「AWS DeepRacer」といったリリースが相次ぎ、機械学習系のサービスが強化されました。強化学習だけで走行ルートやスピードを定める「AWS DeepRacer」では、来年以降、世界各国でNo.1を競うグランプリレースが開かれます。
グランプリレースとは違いますが、現地で当日に開催されたレースでNo.1になるために、我々は強化学習のロジックを必死に勉強し、コーディングに熱中しました。我々が熱狂から冷めてふと気がついたとき、レースに参加する前に比べて、機械学習のことが良く理解できていました。「AWS DeepRacer」もまた、我々に「アマゾン・クラウド・マジック」をかける存在だったのです。
AWSは、機械学習のサービスを強化するとともに、エンジニアの学習意欲や競争意欲にも火を付けることに成功しています。
「AWS DeepRacer」のレースに参加した面々からは、AWSであれば手が出し難かった機械学習を始められそうだ、という声が挙がっていました。このような声が出るくらい、AWSの発表はインパクトがあったと言えます。
AWSの機械学習に関連するサービスについては、今後の動向からも目が離せません。

レポート4. サーバレスの進化も進むAWS
「re:Invent 2018」では、サーバレスアーキテクチャに関連したアップデート、エンジニアの開発利便性を上げる周辺機能のアップデートも相次ぎました。
特に会場を歓喜の渦に包んだのが、今回「AWS Lambda」のRuby対応、「Custom Runtimes for Lambda」のリリース、さらに「API Gateway」のWebSocket対応の発表でした。これらの発表は、サーバレスアーキテクチャの開発における様々な壁を取り払い、自由度を増すものです。今後、ますますアプリケーションのサーバレスへの移行が進むのではないかと思われます。
エンジニアにとって開発環境の選択肢を広げる「AWS Toolkit for PyCharm」等の発表も魅力的で、今回の発表がエンジニアとAWSの距離をますます縮めたのは間違いありません。

最後に
「re:Invent 2018」でAWSが発表した数多くのアップデートは、エンジニアを夢中にすると同時に、我々が今まで取り組んできたことの3歩も4歩も先の姿を見せつけました。本イベントが、現地に赴いたエンジニアの開発意欲を引き立てたことは間違いありません。
数多くのアップデートを目の当たりにした熱狂の後、隣のエンジニアがふと『未来を見た』とつぶやきました。
その言葉通り、AWSはこの「re:Invent 2018」で未来の姿を示しました。AWSに関わる我々には、IT業界の先頭を走り、輝かしい未来を創っていく義務が課せられていると言えます。輝かしい未来を創ること、すなわち『Create Exciting Future』は、TISのグループビジョンでもあります。
TISは今回得てきた数多くの見聞を活かし、AWSの利活用を考える全てのお客様の未来を創るため、今後も邁進してまいります。
以上

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