【自社事例】Bousaizで事業継続マネジメントをDX化しBCPの実効性を向上

経営戦略として取り組むべきBCPの実効性向上
災害などの緊急事態が発生した際、事業の中断を最小限に抑えつつ迅速に正常化することは、社会全体のレジリエンス向上にも寄与する。
したがって事業継続計画(BCP)は、企業が社会的責任(CSR)を果たすために必須とも言える取り組みだ。
自社が社会に貢献しているという意識は仕事のやりがいにもつながるため、 従業員エンゲージメント向上のためにもBCPは欠かせない。
有事に身の安全 が守られる環境で働きたいと考えるのは当然だ。学生が就職先を選択する際にCSRの取り組みを重視する傾向が近年強まっていることが、各種調査で明らかになっている。加えて、BCPの取り組みを進めることはステークホルダー、特に顧客からの信頼獲得につながる。
しかしBCPは「絵に描いた餅」になりがちでもある。
計画を立てるだけでなく、平時から経営戦略の1つとして強く意識し、訓練の積み重ねや計画の見直しなどによって実効性を高める努力を怠ってはならない。
社会を守るための事業継続マネジメントDX
TISインテックグループでもBCPに取り組んできた。
その意義について 代表取締役副社長執行役員の柳井城作は「お客様はエネルギーや決済など社会基盤を担っており、そのシステムをお預かりする私たちが災害に対する強靱性を高めることは、安心安全な社会の実現にも直結します。また、働く時間や場所が一様でない社員と家族の被災状況把握およびサポートは、経営者として第一に考えなければなりません」と語る。
BCPの実効性向上にも努めており、2022年には「物理的に災害対策室へ集まる」という前提の見直しと対策強化を実施。
テレワークが浸透して物理的に会議室へ参集してホワイトボードによる情報共有を行うことが 難しくなっており、また、感染症流行時のように”集まれない”状況も想定される。
そこで、バーチャル空間にて状況の確認や共有を行うために、TISのマルチクラウドサービス部がすでに一般企業へも提供する「危機管理情報共有システムBousaiz」を導入した。
「BCPの実効性向上には、事業継続マネジメントのDXが必要でした。 有事の際の経営判断には迅速で統合的な状況把握が欠かせません。多岐にわたる事業部門やグループ各社、データセンターといった観点が大きく異なる情報をBousaizで一元管理したことで容易に把握できるようになり、その利便性を実感しています」(柳井)

Bousaizで仮想の災害対策本部を設置 能登半島地震でも効果を発揮
有事の際にはTISの管理本部総務部が事務局となって災害対策本部が組織され、TIS社内およびグループ全体の情報を取りまとめる。
総務部エキスパートの小柳津芳和は、訓練を通じて仮想的な災害対策室の必要性を強く感じるようになり、柳井副社長ら経営層が思い描くDXを具現化するために複数のサービスを比較した結果、Bousaizに行き着いた。
「オフィスとデータセンター、そして経営層では、有事の際に必要な情報が異なります。それらの要件を同時に満たすにはカスタマイズの柔軟さが重要です」と小柳津は語る。
例えば従来の運用から大きく変えないように、Excelで行を追加するような感覚で情報を追記できる「詳細報告シート」を設けた。
また、入力欄に表示する記入例も細かくカスタマイズできるため、 緊急時に迷わず入力できるだけでなく、情報の粒度をコントロールし品質も高められる。
2024年元日に発生した能登半島地震では、富山県に本社を置くインテックをはじめグループ各社の拠点が震度5強の揺れに見舞われたことを受け、 後方支援の一環として運用中のBousaizを提供。関係者は帰省先や自宅にいながらスマートフォンでも対応できたという。
今後は利用対象企業を拡大し、まずは2,000人程度までユーザーを拡大する見込みだ。
「かなり直感的に利用できるため、ユーザーのすそ野を広げるためのハードルは高くないだろうと考えています」(小柳津)

カスタマイズ性と情報の一元化機能が高評価
直感的な利用が可能なのは、開発陣の設計思想が的確に反映されているからだ。
情報を見て判断する立場のユーザーにも使いやすく設計されており、 「アメリカにおける災害現場・事故現場管理体系の概念であるICS(Incident Command System)を取り入れ、色分けして一覧化しているので、観点が異なる情報であっても状況を把握しやすく、問題が起きている箇所はドリルダウンして詳細を確認できます」と、マルチクラウドサービス部セクションチーフの林伸哉は説明する。
Bousaizはカスタマイズの柔軟性と情報の一元化機能が評価され、BCP 対策に本腰を入れて取り組む企業で採用されている。
とある食品業界の企業では、災害時にも安定的に供給する使命を強く感じて、サプライチェーン の管理にBousaizを活用している。
公共交通施設では各担当から集めた情報を運営に活用するばかりでなく、監督省庁への報告にも用いているという。
今回の自社導入に関して林は「大小さまざまなグループ会社へ段階的に 統合を進める手法や、立場によって利用可能な情報をコントロールする権限設定など実践的なノウハウを蓄積できたので、複雑なグループ経営を行っているお客様に対しても提供していきたい」と、その意義を強調する。
インタビュイー紹介
TIS株式会社
代表取締役副社長執行役員
柳井 城作
TIS株式会社
管理本部 総務部
エキスパート 小柳津 芳和
TIS株式会社
IT基盤技術事業本部 IT基盤サービス事業部
マルチクラウドサービス部
セクションチーフ 林 伸哉
