ヘルスケア事業特有のビジネス創出のポイント・注意点

2021/12/28
WHOが発表した「Decade of Health Ageing(健康長寿のための10年間)においてもメッセージされている通り、世界的に健康長寿や老化に対する考え方に変化が表れてきています。日本の総人口に占める高齢化率は28.8%(令和3年版高齢社会白書)となっており、日本は世界でも圧倒的に高齢化が進んだ国となっています。中長期目線で見ると欧米やアジア各国も今後日本に追いついてくるという見通しもあるため、世界でも高齢化の社会課題のトップを走る日本がWell-Being(ウェルビーイング;幸福、健康という意味)の増進に向けた成功モデルを構築する事が期待されています。
一方で社会保障費の拡大は右肩上がりであるため、上記のようなWell-Beingの促進は、従来型の医療や介護だけではなく新産業の創出を、我々のような民間事業者の活力の元で果たす事が期待されています。本ブログでは、ヘルスケア 事業で新たにビジネス創出を図る際に考慮をしたいポイントや注意点を解説します。
1.ヘルスケア事業のビジネス創出のポイント①マネタイズ
ヘルスケア事業でビジネス創出を図る際に考慮をしたいポイントや注意点の一点目としては「マネタイズの難しさ」です。
今回の記事で想定するヘルスケア事業のビジネスは、公的医療保険や介護保険の範疇ではなく、公的保険外といわれるビジネスを想定しています。筆者は、この公的保険外サービス(以下、ヘルスケアサービス)を展開するスタートアップや事業者の方と話をする機会も多いですが、「商品やサービスは好評だしニーズもあるのだけど、マネタイズができない」という嘆きをよく聞きます。
ヘルスケアサービスの価値を享受するステークホルダーは多岐に渡りますが、基本的にはWell-Being促進の価値を享受するのは私たち生活者です。ビジネスの原則はサービスの価値を享受する者(今回でいうと生活者)が、提供された価値に対して対価を払うことで成り立ちます。マネタイズが難しいという事はこのバランスが取りにくいという事になります。
ヘルスケアサービスは生活者にとって「健康になる」「薬の飲み忘れが減る」など効果や価値がわかりやすい面がありますが、こうした価値に必ずしも生活者がお金を出すという訳ではありません。こうした効果は生活者にとってはWell-Being促進という目的を実現する一つの手段でしかないため、期待を超える付加価値や体験が提供できないとお金を出すというモチベーションが生まれません。ヘルスケアサービスに限った話ではありませんが、フリーミアムなどが身の回りに溢れておりサービスは無料で使えて当たり前という考えが生活者にはあるため、こうした状況が生み出されやすくなっている事もマネタイズを難しくしている一因であると思います。
2.へルスケア事業のビジネス創出のポイント②エビデンス
ヘルスケア事業でビジネス創出を図る際に考慮をしたいポイントや注意点の二点目としては「効果に関するエビデンスの必要性」です。
ヘルスケアサービスは先にも述べた通り、生活者のWell-Beingを促進するためのサービスと言えます。従って、ヘルスケアサービスとして生活者のWell-Being促進を訴求する以上、医薬品や医療機器のような公的保険の商品やサービスほど厳格ではないものの、サービスの効果や質をしっかりと保証する必要があります。
このようにヘルスケアサービスの効果や質を保証するためには「エビデンス(科学的根拠)」の蓄積が大切です。「エビデンス」の蓄積にはPHR を始めとする健康データの収集・蓄積・分析を医師など専門家の監修のもとで進める必要があるため、体制や知見を持たないスタートアップや中小企業にとってはハードルが高く、大企業にとっても一筋縄にはいかないため、アカデミアとの産学連携のような共創関係をいかに構築するかが重要になります。
3.ヘルスケア事業のビジネス創出のポイント③ステークホルダー
ヘルスケア事業でビジネス創出を図る際に考慮をしたいポイントや注意点の三点目としては「多様なステークホルダーの存在」です。
先の例ではサービス提供事業者と生活者というシンプルな説明をしましたが、生活者のWell-Beingを促進するための実際の仕組みには様々なステークホルダーが存在しています。例えば在宅の高齢者が介護系のヘルスケアサービスを受けるケースを想定した場合でも、生活者本人に加え、かかりつけ医・ケアマネージャー・ヘルパー・自治体・家族と多くのステークホルダーが存在します。
それぞれのステークホルダーが抱える課題やニーズは異なりますので、展開しようとしているヘルスケアサービスの「顧客」にあたるステークホルダーは誰かという部分がサービス開発をしている中で徐々にブレてきます。こうしたブレに気づかずにサービスのローンチまでいってしまうと「そこに市場はなかった」のような状況に陥り、ポイントの一点目で挙げたマネタイズの難易度を上げる事にもつながりますので注意が必要です。
4.まとめ
本ブログでは、ヘルスケア事業で新たにビジネス創出を図る際に考慮をしたいポイントや注意点を解説しました。ヘルスケアサービスは、公的保険サービスではない公的保険外サービスであったとしても独特の規制の枠組みで推進する事になります。今回挙げた三点のポイントを理解し、取り組む事でビジネス創出の実現可能性を上げる事ができると思います。
記事中でも触れましたが、ヘルスケアサービスの創出においてPHRを始めとする健康データの収集・蓄積・分析・利活用を検討する機会は多いため、これらを柔軟に活用できる環境を手に入れる事がヘルスケアサービス創出の近道にもなり得ます。TISでは、豊富なヘルスケア領域に関するノウハウを活かして、スピード感をもった新サービス立上げをご支援する「ヘルスケアリファレンスアーキテクチャ導入サービス」をご提供しています。
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