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健康データを管理することのメリットとは?PHRを扱うサービス事業者が注意すべきことと併せて解説

2023/1/17

ヘルスケアニーズが高まっている昨今、複数の医療機関・薬局と個人とを結ぶPHRを活用したサービスに注目が集まっています。健康データを管理しやすいように、適切に収集し、共有できるサービスであれば、医療機関同士の連携や個人の健­康意識を促す役目を担うことが期待されます。

本記事では、健康データを管理するメリットを解説します。PHRを扱うサービス事業者が注意すべき項目も踏まえて、メリットと照らし合わせながら活用の可能性を探ります。

1.PHRとは

PHR(Personal Health Record:パーソナルヘルスレコード)とは、その人の健康や医療、介護に関する情報の事を指しています。具体的には病院や薬局などの医療機関から生み出されるような医療情報に加えて、自宅で測定した体温・血圧・脈拍といったバイタルデータなどの健康情報を個人単位で集約した情報がPHRです。PHRサービスには、健康管理を目的とした民間企業が提供するものから病院や自治体が運営するものまで、様々なものが提供されています。医療情報と様々なサービスが扱う健康情報を継続的に本人の元に集約しておく事で、日常的な健康管理や医療機関を受診する際に有効に活用される事が期待されています。

ヘルスケアサービスでの管理が想定される健康データ

PHRを活用したサービスが扱うデータとしては下記が挙げられます。

たとえば、母子手帳やおくすり手帳などの記録をデジタル化し、生活者一人一人の情報を管理するアプリが提供されています。また、現在ではスマートウォッチなどが普及し始めており、日常生活でも手軽に生活者自身が健康データを蓄積し、活用できるようになってきました。健康情報を扱うサービスは、今後も広がりを見せていく事が期待されています。

なお、PHRは医療機関が取り扱う「EMR」や「EHR」とは管理主体が異なり、内容も異なります。詳しくは下記の記事で解説しているので、気になる方はご参考ください。

2.健康データの活用が求められる背景

健康データの活用が求められるようになった背景には、複数の要因が影響しています。ここではマクロとミクロ、両方の視点から解説します。

マクロ視点から見たヘルスケア産業

健康データの活用が推奨される背景として、まずは経済産業省が掲げる「次世代ヘルスケア産業の創出」のニーズが挙げられます。

これは、公的保険外の健康管理サービスを活用したセルフメディケーションを浸透させることで、病気になりやすい生活習慣の改善や適切な受診を促すことを目的として掲げられました。

病気にならないように予防するために、自分で自分の健康を管理する意識を持つ。これにより、国民の健康寿命の延伸と新産業の創出を同時に達成し、「あるべき医療費・介護費の実現」につなげることがコンセプトとして語られています。

ミクロ視点から見たヘルスケア産業

一方で、生活者の健康意識の高まりも、ミクロ視点での要因として挙げられます。健康に関する意識そのものは十年以上前から高まりを見せていますが、特に2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、その流れが大きく加速したと言えます。

たとえば内閣府が発表した「第2回 新型ウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、「コロナウイルス感染症拡大前に比べて不安が増していること」に対して「健康」と回答した人は全体の32.7%を記録し、最も高い割合となりました。つまり、普段から健康を意識して行動したり、病気をきっかけに生活習慣の見直しを図ったりする人が増えていると考えられます。

3.PHRサービスで健康データを管理するメリット

続いて、PHRを管理するメリットをご紹介します。

有事の際の緊急対応

地震・台風などの天災や火事・交通事故など、緊急を要する事態が発生した際に、医療機関等による対応において有用です。対応者は、かかりつけ医からヒアリングせずともPHRに記録されている内容から既往歴や服用薬などが確認できれば、よりスピーディーな応急対応を施せる可能性が高まります。

このような有事のとき、必ずしも自分自身で適切な情報を医師に提供できるとは限りません。日頃からPHRが管理されていれば、このような状況の備えになりますし、対応にあたる医療機関の負担軽減にもつながる事が期待されます。

専門職からのパーソナライズされた指導

特定の目的にフォーカスしたサービスでは、専門職からのパーソナライズされた指導を受けられるものも有用です。例えば糖尿病や高血圧対策の一環として管理栄養士から指導を受けている場合、普段の食事内容・体重・血圧などのライフログデータが自己管理の結果として明確になります。近年では自宅でも正確な血糖値が測定できる商品が使われるようになっています。自分の症状や感覚の変化に加えて、PHRの数値の変化でも示される為、指導に基づいた自己管理の努力の励みになります。指導にあたる専門職にとっても、対象者が自分で管理している数値情報を使ってやる気を引き出す事や、対象者にあわせた方法を探る事などに活かせます。

医師や看護師とのコミュニケーションの促進

医療機関や関連施設が参加するスキームが整ったPHRサービスには、医療従事者とのチャット機能が搭載されているものもあります。医師や看護師・薬剤師等と診察や調剤といった対面の場以外でもコミュニケーションができるため、時間や場所の制約を受けず専門的なアドバイスが受け取れます。

「普段の診察で聞き洩らしてしまったことがある」「対面では相談しづらいことも相談したい」という人にとって、このような方法でコミュニケーションが取れる事は非常に大きなメリットになると言えそうです。

健康管理の促進

スマートフォンやタブレットで健康データが簡単に確認できるようになれば、自己管理のきっかけや促進につながります。治療の経過の確認や、日常生活でのヘルスケアに関する情報の確認が、自分の健康状態への気づきや当事者意識の醸成につながり、生活習慣の改善に取り組みやすくなるなど、さまざまなシーンで健康管理のきっかけになる事も期待されます。

また、離れた場所に住む家族との間で情報を共有することで、お互いの異変や違和感に気付いたり、受診を勧めるような連絡を取るきっかけになります。健康増進のためには、1人ひとりの意識に加えて周囲からの声がけが欠かせないので、家族と健康・医療情報を共有できるPHRサービスも有用とされています。

4.PHRサービスを扱う際の注意点

このようなメリットが期待されるPHRを取り扱う事業者を対象としたレギュレーションの1つが、総務省・厚生労働省・経済産業省による「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」です。同指針では、特に厳重な管理が求められる個人情報を扱うPHRサービスだからこそ遵守すべき内容が記述されています。具体的には「情報セキュリティ対策」「個人情報の適切な取扱い」「健診等情報の保存および管理ならびに相互運用性の確保」の3項目から構成されています。特に、下記の情報を扱うサービスは本指針の対象となるので、あらかじめチェックしておきましょう。

  • 個人がマイナポータルAPI等を活用して入手可能な健康診断等の情報
  • 医療機関等から個人に提供され、個人が自ら入力する情報
  • 個人が自ら測定または記録をおこない、医療機関等に提供する情報

同指針の中でも重要なトピックである「同意取得」のルールについては、以下の記事で解説しているので、ぜひ併せてご参照ください。

また、2022年6月16日にはPHRサービス事業を展開する企業15社が業種を超えて集まり、「PHRサービス事業協会(仮称)」設立宣言が行われました。2023年度早期の設立を目指しつつ、健康・医療に関する様々な主体が持つデータを効果的に利活用するための標準化や、PHRサービスの品質向上を促進するためのルール整備などについて検討する団体として活動していく予定とされています。

【PHRサービス事業協会(仮称)への参加企業 ※五十音順】
株式会社Welby、エーザイ株式会社、株式会社エムティーアイ、オムロン株式会社、オムロン ヘルスケア株式会社、KDDI株式会社、塩野義製薬株式会社、シミックホールディングス株式会社、住友生命保険相互会社、SOMPOホールディングス株式会社、TIS株式会社、テルモ株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社FiNC Technologies、富士通株式会社、株式会社MICIN

https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220620005/20220620005.html
(2022年6月時点)

現在施行されている法制はもちろん、指針やガイドライン、業界団体により整備されるルールなど、今後遵守すべき情報がアップデートされていくことが想定されるので、各事業者はそれらを随時取り入れることを考慮した計画としておくことが大切です。

DXの推進に向けて ヘルスケアサービスのデータ基盤とは?/
↓こちらよりダウンロード【PDF】↓

5.まとめ

PHRは様々なシーンで活用する価値がある情報です。と同時に、極めてセンシティブな個人情報であり、PHRを扱う際には厳重な管理が求められます。
このようなデータを一般消費者が適切に管理できるようにするためのインフラとなる仕組みの整備が進められています。行政や医療機関による対応とあわせて、民間企業を主体としたPHRサービス事業協会(仮称)の設立が宣言され、ルール整備・策定等に向けた対応が確実に進められています。

PHRを扱うサービスへの需要の前提となる仕組みの整備が進んでいく事が見込まれる為、PHRを軸とした事業展開は今が最適な検討タイミングだと言えます。TISでは、PHRデータ活用を促進するための「ヘルスケアプラットフォーム」を開発・展開しています。健康・医療情報の収集・蓄積・共有に向けて、データ量や品質の評価の支援や、同意取得などのデータ基盤に持たせるIT機能などのPHR分野に特化したソリューションを、PHRサービスを展開する事業会社向けにご提供しています。ヘルスケア事業への参入や拡大を検討されている方や運用手法にお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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更新日時:2023年10月4日 19時54分